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第12話

皆様こんにちは。くまくま、だ。


 今年もゴールデンウィークがやってきた。去年の今頃に「来年こそは」って思っていた気がするけど、まさか今年も大差ない状況なのは残念というか、ガッカリというか・・・。あれ、ヌシさん何を読んでるの?

『うん、ちょっと』

 何が「ちょっと」なんだよ。僕にも見せろ。

『ちょっと、くまくま』

 ムッとするヌシさんを無視して覗き込んだそれは、ドライブのガイド本だった。おっ、気球じゃないか。一度でいいから乗ってみたいな。あ、こっちは工場夜景だ。これも見てみたい。おお、ここもあそこも絶景だ。行ってみたいところばかりだ。だけど、ヌシさんは観光地じゃないページにくぎ付けになっている。ちょっとヌシさん、サービスエリアやパーキングエリアのご飯ばっかり見てないで。本来の目的忘れてない?

『どれも美味しそう・・。全部食べたい・・・。食べ歩きもいいかも・・・』

 どうやら僕の声は聞こえていないみたいだ。困ったものだ。

「くまくまさん、こんちにはにゃ。ご機嫌いかがにゃ?」

 突然あらわれたミケさんは、僕の返事を聞かずしゃべりだした。

「次はどこに行きたいか聞きにきたにゃ。動物園? 遊園地? ところで、くまくまのヌシさんはなにを見てるにゃ? あ、おいしそうなご飯がいっぱいにゃ!」

 ミケにも見せてにゃと言いながら、ミケさんまでもが本にかじりついてしまった。



 ややあって、ヌシさんとミケさんはようやく本から顔を上げた。ひょっとして行き先をきめたのか? もしそうなら、僕も連れて行け。

『前にも言ったと思うけど、くまくまのサイズは無理』

 なんでだよ、ドライブだぞ、ドライブ。抱いて歩く必要ないじゃないか。

『ドライブにはジュラルミンを連れて行くことにしたから』

 ジュラルミン? 金属なんかどうやって連れていくのさ。

『この子の名前だよ。くまくまの代理』

 そういってヌシさんが僕に引き合わせたのは、ヌシさんの手の平サイズのぬいぐるみ。

『似てるでしょ? 桜色のクマで』

 似てないよ! 全然似てない! 全くの別人、いや別ぬいじゃないか!

『ジュラルミンならカバンに無理なく入るし。ぶら下げることもできるし』

 だから連れて行きやすいというヌシさん。ひどいよ。

「くまくまさんは、ミケたちと一緒にお出かけするのにゃ。だから、ヌシさんと行くのは駄目にゃ。あきらめるのにゃ。」

 そんなあ・・・。

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