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第25話

皆様こんにちは。くまくま、だ。


 さて、僕の次なる野望、いや目標は「海に連れていってもらうこと」だ。実はまだテレビとかでしか見たことがないんだ。そうそう、もし連れていってもらえるなら、椰子の実が流れ着く海が見てみたい。

『くまくま、そこに行こうと思うと結構遠いから。近場の海で手を打ってよ』

 やだよ。椰子の実を拾ってみたい。

『行ったとしても必ず拾えるわけじゃないよ? むしろ空振りになる可能性が高いよ? 椰子の実どころか、何も拾えないと思う』

 なんだよ、意地悪なこと言うなよ。ヌシさん、どうせ行ったことないだろう?

『あるよ』

 え? 一体いつの間に行ったんだよ。どうして連れていってくれなかったのさ。

『だって、40年近く前の話だもの』

 ・・・・・いつの話だよ。



 海、海、海。海に行きたい。そう思っている僕の耳に歌声が聞こえてきた。

「海は広いにゃ~、大きいにゃ~、き~っとお魚いっぱいにゃ~」

「ミケちゃん、お魚取ろうとしなくていいからね」

 この声は、ミケさんとお姉さん?

「あ、くまくまさん。やっと起きたにゃ」

 いつもの猫カフェに来たかと思ったら、海に行きたいと大騒ぎ。だから連れてきたのに、着くなり、いや着く前から寝てしまったにゃ、とミケさんが言う。いや、全然覚えてない。カフェに行った記憶すらない。

「念願の海、どうですにゃ?」

 うん、平凡な感想になるけど、広いね。そして、独特な香りがするね。嫌いじゃないな、この香り。

「磯の香りだにゃ。この香りの正体は」

「ミケちゃん、その先は言わなくていいから」

 お姉さんはミケさんの口をふさぎながら、こう続けた。お腹もすいてきたことだし、ご飯を食べようと。僕は喜んでご相伴することにした。



 お姉さんに連れられ、海辺にあるカフェにはいった。席に着くなり、2匹の店員が近寄ってきた。

「お客様、本日のおすすめはバケツシャーベットのレモン味です」

「いいえお客様。おすすめはバケツシャーベットのオレンジ味です」

「いやいや、こんな暑い日は、爽やかなレモン味が一押しですよ」

「とんでもない。遊び疲れた体には、さっぱりとした甘さのオレンジ味が一番」

 客の前で言い争い(?)を始めた店員は、黄色と橙色の、シャチ。うん、どう見たってシャチだ。しかも、どこか見覚えがあるシャチだ。

「くまくま、当然レモン味を選ぶよな?」

 黄色いシャチが言う。

「くまくま、当然オレンジ味を選ぶよな?」

 橙色のシャチが言う。色以外の全部が一緒の2匹に詰め寄られ、ようやく僕は思い出した。そうだ、こいつらヌシさんが海に連れて行くんだと言っていたシャチだ。なんだって働いているんだ?

「「パートナーと遊びにいくお金を稼ぐためだ!!」

 そこの答えは一緒なんだ。・・・いや待て、2匹ともパートナーがいるのか?

「「いるとも! とてもかわいいんだ!!」」

 その答えも一緒か! いいな、パートナー・・・。僕も欲しいな。君たちはどこでパートナーと出会ったんだ?

「「ヌシが連れてきた!」」

 ヌシさん、僕を差し置いて新入りを、しかもシャチをそこまで・・・!! 僕の扱い、ひどくないか?

「ミケがくまくまさんのパートナーになってもいいにゃ」

 いや、パートナーは同族がいい。僕もヌシさんに頼もう、パートナーが欲しいって。

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