皆様こんにちは。くまくま、だ。
さて、僕の次なる野望、いや目標は「海に連れていってもらうこと」だ。実はまだテレビとかでしか見たことがないんだ。そうそう、もし連れていってもらえるなら、椰子の実が流れ着く海が見てみたい。
『くまくま、そこに行こうと思うと結構遠いから。近場の海で手を打ってよ』
やだよ。椰子の実を拾ってみたい。
『行ったとしても必ず拾えるわけじゃないよ? むしろ空振りになる可能性が高いよ? 椰子の実どころか、何も拾えないと思う』
なんだよ、意地悪なこと言うなよ。ヌシさん、どうせ行ったことないだろう?
『あるよ』
え? 一体いつの間に行ったんだよ。どうして連れていってくれなかったのさ。
『だって、40年近く前の話だもの』
・・・・・いつの話だよ。
海、海、海。海に行きたい。そう思っている僕の耳に歌声が聞こえてきた。
「海は広いにゃ~、大きいにゃ~、き~っとお魚いっぱいにゃ~」
「ミケちゃん、お魚取ろうとしなくていいからね」
この声は、ミケさんとお姉さん?
「あ、くまくまさん。やっと起きたにゃ」
いつもの猫カフェに来たかと思ったら、海に行きたいと大騒ぎ。だから連れてきたのに、着くなり、いや着く前から寝てしまったにゃ、とミケさんが言う。いや、全然覚えてない。カフェに行った記憶すらない。
「念願の海、どうですにゃ?」
うん、平凡な感想になるけど、広いね。そして、独特な香りがするね。嫌いじゃないな、この香り。
「磯の香りだにゃ。この香りの正体は」
「ミケちゃん、その先は言わなくていいから」
お姉さんはミケさんの口をふさぎながら、こう続けた。お腹もすいてきたことだし、ご飯を食べようと。僕は喜んでご相伴することにした。
お姉さんに連れられ、海辺にあるカフェにはいった。席に着くなり、2匹の店員が近寄ってきた。
「お客様、本日のおすすめはバケツシャーベットのレモン味です」
「いいえお客様。おすすめはバケツシャーベットのオレンジ味です」
「いやいや、こんな暑い日は、爽やかなレモン味が一押しですよ」
「とんでもない。遊び疲れた体には、さっぱりとした甘さのオレンジ味が一番」
客の前で言い争い(?)を始めた店員は、黄色と橙色の、シャチ。うん、どう見たってシャチだ。しかも、どこか見覚えがあるシャチだ。
「くまくま、当然レモン味を選ぶよな?」
黄色いシャチが言う。
「くまくま、当然オレンジ味を選ぶよな?」
橙色のシャチが言う。色以外の全部が一緒の2匹に詰め寄られ、ようやく僕は思い出した。そうだ、こいつらヌシさんが海に連れて行くんだと言っていたシャチだ。なんだって働いているんだ?
「「パートナーと遊びにいくお金を稼ぐためだ!!」
そこの答えは一緒なんだ。・・・いや待て、2匹ともパートナーがいるのか?
「「いるとも! とてもかわいいんだ!!」」
その答えも一緒か! いいな、パートナー・・・。僕も欲しいな。君たちはどこでパートナーと出会ったんだ?
「「ヌシが連れてきた!」」
ヌシさん、僕を差し置いて新入りを、しかもシャチをそこまで・・・!! 僕の扱い、ひどくないか?
「ミケがくまくまさんのパートナーになってもいいにゃ」
いや、パートナーは同族がいい。僕もヌシさんに頼もう、パートナーが欲しいって。
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