top of page

第33話

皆様こんにちは。くまくま、だ。


実は今年に入ってから、僕はあることに悩まされている。え、能天気な僕に悩みごとなんてないだろうって? 失礼だな。

悩みは、これだ。

「ヌシさんは、いつ買ってきてくれるのかな」

「楽しみだねー」

「ねー」

「どんなのを買ってきてくれるかな

「早く欲しいねー」

「ねー」

 こんな会話が元日の夜から繰り返されているんだ。しかも一晩中。眠れやしない。おかげで僕はすっかり寝不足になってしまった。・・さて件のが誰のものかというと。ヌシさんと旦那さんが元日に連れ帰ってきた2頭のシャチだ。しかもこの2頭、瓜二つときている。この2頭の区別をつけるため、ヌシさんは彼女たちに素敵なリボン(もしくはそれに類する何か)を買ってくると約束したんだ。で、彼女たちはそれを物凄く楽しみに待っていて、毎夜毎夜その話をし続けている。なあヌシさん、もう2か月経つけど、いつになったら買ってくるのさ、リボン。

『探しているんだけどさ、こう心にグッとくるリボンが見つからなくてさ』

 適当でいいじゃん、適当で。僕の安眠のほうが遥かに大事。そう言った途端、後ろから頭を叩かれた。痛いなあ、オレンジシャチ。

「僕じゃない」

 彼が胸びれで示したのは、桜色ズとくましろう、そして雪の丞。

「「「「リボンは最重要事項!!!!」」」」

 い、いつのまに。桜色ズはともかく、くましろうと雪の丞は別の部屋にいたんじゃ・・・。

「リボン選びは重要だぞ」

「似合わない色を選びでもしたら、可愛さが半減、いやそれ以下になりかねない」

「そう、リボンはお洒落の基本」

「まあ、くまくまはサイズの合わない服なんて着ているから、お洒落が分からないんだよ」

 う、反論できない。

「「「「くまくまにお洒落は理解できないんだねー」」」」

 ぬ、ヌシさん、僕にもリボン買ってくれ。

『・・・女の子のシャチたち全員にリボンを買った後なら』

 いつになるのさ。元日シャチ(いまだ名前がついていないので暫定)以外に、女の子のシャチが何頭いるのか分かってるのか? 5頭もいるんだぞ、5頭も!

『というか、くまくま。リボンつけたいの?』

 いや、つけたいわけじゃないけどさ。なんだか言われたい放題で悔しいじゃないか。僕もおしゃれと言われたい。それだけさ。

最新記事

すべて表示

第46話

皆様こんにちは。くまくま、だ。 今年も残すところあと一か月。その一か月の間にある最大イベントと言えば。そう、クリスマス! うちには未だハロウィン衣装を身に着けたままのシャチがいる。いつ脱ぐんだと聞いたところ、こう返された。...

第45話

皆様こんにちは。くまくま、だ。 さて、先月はイベントに連れていってもらえなかった。そして次の機会があれば、僕もお出かけ候補にいれると約束させた。にもかかわらず、ヌシさんは、またまたシャチ(前回とは違う、僕と大きさがそんなに変わらないシャチ)を連れて出かけていった。ひどいじゃ...

第44話

皆様こんにちは。くまくま、だ。  少し前に、うちのシャチたちがヌシさんに連れられて、どこかに出かけていった。うきうきで帰ってきたシャチに、どこに行ったのかを尋ねてみたら、こんな返事が返ってきた。 「写真、いっぱい撮ってもらった」 「くまくまみたいなクマが、いっぱいいたよ」...

Comments


bottom of page