第３６話

皆様こんにちは。くまくま、だ。

　近頃のヌシさんは、「欲しいモノであふれかえっている」状態で、色々とモノを増やし続けている。整理整頓が苦手なくせに、大丈夫なのか？　いやそれ以前に、お金大丈夫か？入ってくる以上に出ていってないか？

『いやでも、モノとの出会いは一期一会。買うかどうか迷っているうちに、無くなるかもしれない。ああ、やっぱり買っておけば良かったって思いたくない』

　迷っているうちに買えなくなったんなら、それは縁がなかったんだよ。ちょっとはお金を大事にしなよ。

『うーん、でもやっぱり欲しいものは欲しい。それに一応少しは我慢している』

　本当にしてるの？

『してる、つもり』

　つもりかい！！

　そしてやっぱりまた欲しいものを手にいれて、ヌシさんがほくほくとしながら帰ってきた。

『くまくま、これ見てよ！　かっこよくない？　かっこいいよね！　シャチもかっこいいけど、それ以上にいいのがこのザトウクジラの躍動感！』

　ヌシさんが僕の眼前に並べたのは、手のひらにのるサイズのフィギュア（・・って言っていいと思う、多分）なんとまあ、ガチャガチャで手に入れたらしい。いい年して何やっているのさ。ガチャガチャって、子供向けのものだろう？

『くまくま、おくれてるよ。今やガチャガチャは子供から大人まで老若男女を問わないものだよ!！』

　ふうん。まあ、それはそれとしてヌシさんの推しはシャチだろう？　シャチ推し、やめたの？

『やめてないよ！　シャチは何時でも何処でもかっこいいし可愛い。でも今回に限っては、ザトウクジラが一番な気がする』

　でも、とヌシさんが続ける。

『シャチならどれだけでてきてもウェルカムなんだけどさあ。物欲センサーのせいで、思うように出て来てくれなかった』

　こころなしかしょんぼりとしているヌシさん。いや、ただ単にシャチの数が少ないだけなんじゃないの？

『でもさあ、これみてよ』

　ヌシさんが指さしたのは、パソコンの画面だ。僕の目の前にあるモノと同じモノの写真があって・・・、あ、あれ、シャチが一番出やすいんだ・・・って、オンラインでガチャガチャができるのか！？

『くまくま、おくれてる』

　うるさい！　僕が時代の流れに取り残されているのは、ヌシさんが僕を連れて外出してくれないからだ！　僕だけのせいじゃない！！